桂望実さん「手の中の天秤」
執行猶予期間が終わった時、加害者の生活態度や反省状況をチェックして、刑務所に入れるかどうかを被害者や遺族自身が決めることができたとしたら? それを実現する「執行猶予被害者・遺族預かり制度」が施行された社会。新人担当係官の井川は、加害者の反省状況を伝えることで、被害者の痛みや遺族の喪失感を少しでも和らげることができればと考えていたのだが……。加害者を刑務所に送る権利を手に入れた時、遺族や被害者はある程度救われるのか。逆に加害者は、「本当の反省」をすることができるのか。架空の司法制度という大胆な設定のもとで、人を憎むこと、許すこととは何かを丹念な筆致で描いていく、感動の長編小説。
Amazon 「BOOK」データベースより
どうしようもない悪人が出てくるわけではなく、読んでいて辛くなることもなく、それでいて、続きが気になって仕方がありませんでした。こうして安心して読むことのできる小説が、今の私には必要。
なにがオンリーワンだ。オンリーワンなんかに、ならなくていい。平凡は最高じゃないか。昨日と同じ今日を過ごせるだけで、充分凄いことなんだ。(中略)平凡だけど、平凡で穏やかに一日を過ごせるのって、凄く幸せなことだった。
本文より
毎日「こんな一日を過ごしていてはダメ。何かしなくては。何者かにならなくては」と考えながら「だったら何がしたい?何ができる?どうしたいの?ただ、やりたいことをやる一日を過ごすのではダメなの?」と、グルグル。
そんな私にとって、上記の一文は私に、平凡でいいんだよ。何者かにならなくていいんだよ。と平凡に生きることの勇気をもらったような気がします。